スマホやコンデジでも使える。写真をきれいに撮るための基本
「きれいな写真」とはどういった写真でしょうか? その答えは人それぞれかもしれませんが、ここでは、その写真の意図を伝える、もしくは撮影対象が魅力的に見える写真の撮影方法を月1回の配信で紹介していきます。誰もがカメラを持ち、InstagramなどのSNSが普及している今、日常生活にも役立つ内容にできればと思います。
第1回目となる今回は、スマートフォンやコンパクトデジタルカメラ、一眼レフといったカメラの種類にかかわらず共通する心構えを中心にご紹介します。
心構えその1:手ブレをふせぐ
一時期、片手でカメラを構えてスタイリッシュに撮影しているコンデジのCMが流行りましたが、自撮りやハイアングルからの撮影、ノーファインダー撮影などの意図がない限りやめましょう。両手でしっかりとカメラを持ち、可能ならば肘を自分の身体や壁、机などに当て、カメラをできる限り固定した状態で撮影するのが基本です。また、人はふだん呼吸のために身体が動いていますので、シャッターを切るタイミングで息を止めるようにすると良いでしょう。
必ずしもブレることが悪いわけではありません。ブレによって伝えたいことがより伝わる場合もあるでしょう。ですが、まずは手ブレすることなく、鮮明に対象を撮影できるようになりましょう。
手ブレは対象の表面にぼかしをかけてしまうようなもの。その写真を見る人に伝わる情報量を減らしてしまいます。ブレることなく鮮明に写した写真ならば、対象の形状や質感など、もしくは細かな表情などを、見る人によりハッキリと伝えられます。
「そこまでしなくても手ブレさせないなんて簡単だよ」なんて人もいるでしょうが、その写真は本当にブレていないでしょうか? 拡大してよく見てみてください。写真の表示サイズが小さいから縮小されて気にならないだけで本当はブレていることも少なくありません。
テレビやタブレットなどの液晶画面は、フルHDやそれ以上のものが当たり前になりましたが、今後さらなる高解像度の4Kや8K規格が控えており、よりいっそう画像の鮮明さが大切になることが予想されます。その写真を今後も使えるようにするためにも、最大解像度で撮影し、ブレなくシャープに撮影しておきましょう。未来の話だけでなく、現時点でも写真をトリミングして使用する際に解像度とシャープさが役に立ちます。
心構えその2:光はじゅうぶんか確かめる
写真は基本的に、“レンズを通してその場所その瞬間の光を記録する”ものです。撮影のときにある「光」がどんな光かを意識するようにしましょう。人間の目(脳)は環境の光に応じて、見えている色を自動的に調整しますが、それと同じようにカメラにも「ホワイトバランス」というものがあります。多くのカメラは自動的にそのホワイトバランスを調整する「AWB(オートホワイトバランス)」と呼ばれる機能を搭載しているため、あまり意識する必要はありません。
ここではそうした技術的な話ではなく「そこにある光が撮影対象を魅力的に見せているかどうか」を考えることの重要性をお伝えします。
(左:蛍光灯 右:電球)
たとえばケーキ屋さんや製菓メーカーが新商品のケーキを撮影するにしても、オフィスの蛍光灯の下で撮影するのか、カフェのような間接照明などのある環境で撮るのかによって、大きく印象は変わります。
記者会見やピアノの発表会など、その瞬間その場所でなければならない場合は別として、撮影時刻を選べる、もしくは撮影対象を移動させられるのであれば、その対象を魅力的に撮影できる時間と場所をできる範囲で考え、そこでそのときに撮影するようにしましょう。
また、カメラの性能によりますが、暗い場所では手ブレが発生しやすくなります。スマートフォンをはじめ最近のカメラは手ブレを防ぐために撮影感度(ISOと言います)を自動的に上げるようにできています。
(左:ノイズが少ない 右:ノイズが多い)
撮影感度が上がると少ない光でも撮影できるようになるのですが、その代わり写真にノイズが乗り、細部が潰れて画質が下がります。使用するカメラが、どの程度の暗さなら手ブレすることなく、また許容できるノイズ量で撮ることができるかを把握することも、光選びには重要です。
プロのカメラマンが照明をいくつも立てたり、ストロボをカメラにつけたりするのは、限られた条件において対象をどう見せるかを考え、そのために必要な光を作るためなのです(主に報道分野においては、暗い状況でもハッキリと対象を撮影するための場合が多いです)。
心構えその3:何を伝えたいのかを考える
光が十分かどうかを判断する基準として紹介しましたが、写真撮影時の最大の心構えは「その写真で誰に何を伝えたいのか」をしっかりと考えることです。それがハッキリしていれば、どんな写真を撮影するかは、おのずと決まってきます。たとえばライフスタイルショップの店員が、コーヒーカップをWebサイトやSNS上で紹介するとしましょう。この場合、そのコーヒーカップのどこが魅力的なのかを考えることが何よりも先決です。プリントであれば、そのプリントがハッキリと見えるように。カラーリングならば、その発色がしっかりと伝わるように。梨地のようなマットな質感に注目して欲しいのであれば、その表面のテクスチャーがはっきり伝わるように自然光のもとで近寄って撮るなど、工夫点が決まってくるはずです。
例えば、掲載枚数が複数ある場合は、コーヒーカップを擬似的に手にとって見てもらうように見せることもできます。上記の画像のように、全体像をまず撮影し、それから注目してほしい部分をクローズアップするようにすると良いでしょう。
もしくは、そのカップを購入して実際に自宅で使うことで実現するライフスタイルを想像させたいのなら、自宅やカフェのような空間で実際にコーヒーを注いでいる、もしくはカップで飲んでいるイメージシーンを撮りましょう。
その写真を見る人にどう感じてもらいたいか。撮影対象をどう見てもらいたいのか。それを考えることがいちばん大切です。